衝突を経て結束した組織は強い
周囲から結果を求められ、その実力もあると見られていたチームが、成果を上げられずに大会を終えた。
ビジネスシーンに当てはめれば、有力視されていたコンペで負けてしまったり、自信を持って送り出した商品が販売不振に終わった状況になるだろうか。
今年6月から7月にかけて行われたサッカーW杯で、ブラジルは4位に終わった。2度目の開催国に指名された今回は、史上最多6度目の優勝をつかむ黄金の好機だった。
ところが、準決勝でドイツに1対7の大敗を喫し、3位決定戦でもオランダに0対3で敗れてしまう。
チームの再建を託されたのは、現役時代にW杯で優勝経験を持つドゥンガだった。
監督就任にあたって、彼は厳しい規律をチームに持ち込む。
16項目の行動規範を決めたのだ。
そのなかには、「代表の活動期間は帽子をかぶらない」とか「イヤリングやピアスをしない」といった個人の趣味嗜好に関わるものも含まれている。
現役時代の彼は、闘争心剥き出しにプレーするファイターだった。
Jリーグのジュビロ磐田に在籍した際には、「鬼軍曹」と呼ばれている。
自らを厳しく律することで結果を残してきたスタイルを、ブラジル代表の後輩にも強制しているのでは、といった憶測もささやかれる。
周囲が騒がしくなるのは、ドゥンガも計算済みだ。
選手から不満が漏れるのも想定している。
選手の意見は正面から受け止める。
相手が納得するまで、何回でも話し合う。
「試合に負けたあとに文句を言い合うよりも、試合に勝つためにあらかじめ主張をぶつけ合ったほうが、最終的にみんなが笑顔になれる」
というのがドゥンガの真意なのだ。
他者の気持ちをくみ取る日本人には、なじみにくい組織論かもしれない。
それでも、大きな挫折から立ち直るには、思い切ったマネジメントが必要な場面もあるだろう。
「衝突を経て結束した組織は、本物の団結力を得る」とドゥンガは言う。