「渡切交際費」とはどのようなものか?
「渡切交際費」とは、法人の業務のために役員や社員に対して、交際費等を目的として金銭を支出したにもかかわらず、その使途や金額について精算されないものを指します。
たとえば、接待が終わって顧客にタクシー代を渡す際、その領収書を回収しないことなどがあります。
こうした場合に備えて、あらかじめ社員らに渡す金銭になり、つど精算しなくてよいという点などがメリットとして考えられてきました。
<渡切交際費は「給与」の性質>
渡切交際費は、その名に「交際費」とついています。しかし、その使途について明らかにしないため、税務上は交際費ではありません。
その金額については、金銭を受け取った社員らが任意に処分できることから、「給与」の性質を有しているとみなされています。
そこで、会社側としては給与として損金処理を行い、受け取った個人の給与所得に計上されます。これにより、個人には所得税が課せられます。
もし、給与であるとすると、消費税の仕入税額控除の対象とはなりません。また、支給する対象が役員であれば、定期同額給与なのかという問題も出てきます。
<渡切交際費は得か? 損か?>
渡切交際費を適用するにあたって、交際費が限度額を超えているような企業にとっては、一定の節税効果も見込めることでしょう。
なぜなら、交際費の損金算入限度額以上の金額は全額損金不算入となるため、その全額が課税対象になるのに対して、例えば、使用人に対しての渡切交際費を給与として扱うのであれば、損金算入が可能だからです。
しかしながら、渡切交際費は「何にいくら使ったか」を会社が把握していないという点で、リスクを抱えます。
特に役員への支給の場合に、定期同額給与や過大給与に該当するかの判定についても、慎重な判断が必要になります。
結果的には税務上のコストとともにコンプライアンスへの影響も発生しますので、十分にご注意ください。