採用内定者の親からの辞退申し入れは有効?
新規学卒者の採用内定後、内定者本人の親から辞退の申し入れがありました。
内定者本人が直接申し出るのが筋だと思うのですが、辞退に応じる必要はあるのでしょうか?
<内定者本人が「未成年者」なら解除可能>
結論から言うと、内定者本人が「未成年者」であれば、親は内定を辞退することができます。
採用内定の法律的な意味は、最高裁判決等により、「採用内定(決定)の通知の発信が、使用者による(始期付き、かつ、解約留保権付き)契約の承諾」と考えられています。
条件付きですが労働契約が成立したと解されているのです。
すなわち、採用内定通知書または誓約書に記載されている採用内定取消事由が生じた場合は解約できる旨の合意が含まれており、また卒業できなかった場合も当然に解約できるものとされています。
労働基準法では、未成年者との労働契約締結に関して一定の制限を設けています。
使用者は、満15歳未満の年度末までの「児童」を原則使用することはできません。それ以上の年齢の者を雇用する場合でも、満18歳に満たない者(年少者)については、年齢を証明できる戸籍証明書(住民票記載事項の証明書)を備えなければならないとしています。
さらに、「未成年者」との労働契約締結において、親権者(原則「父母」を指す)もしくは後見人または行政官庁(労働基準監督署長)は、労働契約が未成年者に不利であると認める場合、契約を解除できる(労働基準法58条)としています。
労働契約が未成年者に不利、とは何をもって判断するのでしょうか。学説では、「親権者等が不利であると認めさえすれば足りる」と解されています(労働基準法コンメンタール)。
ただし、解除する場合に、何らかの理由を示さなければならず、理由を示さない場合や、示してもまったく根拠のない場合は解除無効と解されています。
親権者等が不利な労働契約であると主張したときに、本人の意思はどのように考えればいいのでしょうか。
親からの連絡は、通常本人の意思を代弁するものと考えられます。
仮に、本人の意思に反するとしても、「解除権者(親権者等)の使用者に対する好悪の感情、未成年者またはその交友との信条の相違、親権者の家庭事情等の解除権者の都合による事由に基づいて不利を認定して解除権を行使するのは権利の濫用」とした判例もあります(倉敷紡績安城工場事件、名古屋地判昭和37・2・12)。