「税抜経理」の採用で、交際費として使える金額が「〇十万円」も違う!
経理で気を付けなければならないのは、消費税の扱いです。
消費税の課税事業者となった場合、預かった消費税と支払った消費税を記帳する必要があります。
この記帳の方法には、「税抜経理」と「税込経理」の2通りあります。どちらが得なのでしょう?
■「税抜経理」では「仮受消費税」「仮払消費税」の区分が必要
消費税の課税については、税抜、税込のどちらの処理でも変わりません。
消費税を会計処理する方法には、税込経理と税抜経理の2種類あり、どちらを選択するかは会社の自由です。
しかし、どちらかを選んだら、全取引をその会計方式で処理することが原則です。
例えば、商品を108,000円(うち消費税8,000円)で販売した場合、仕訳は税抜経理と税込経理とでは、以下のように異なります。
<税抜経理>
(借方)現金108,000 (貸方)売上 100,000
仮受消費税 8,000
<税込経理>
(借方)現金108,000 (貸方)売上108,000
また、交通費として10,000円(税込)支払った場合、仕訳は税抜経理と税込経理とでは、以下のようになります。
<税抜経理>
(借方)旅費交通費9,260 (貸方)現金10,000
仮払消費税 740
<税込経理>
(借方)旅費交通費10,000 (貸方)現金10,000
以上からわかるように、税抜経理では、預かった消費税を「仮受消費税」、支払った消費税を「仮払消費税」として区分します。一方、税込経理では区分する必要がありません。
■交際費の金額は「税抜」「税込」で異なる
消費税は仕入れのほか、資産の取得や経費等にもかかってきます。
税抜処理か税込処理のいずれかを選ぶことで有利不利が生じる項目として、交際費が挙げられます。
資本金1億円以下の中小法人が交際費を損金に算入するには、年間800万円の限度額があります。
税抜処理にするか税込処理にするかで、交際費の金額に違いが生じるのです。
税込経理の場合には、交際費の金額に消費税を含むことになります。
一方、税抜経理を採用している場合には、交際費の金額に消費税を含まなくてよいことになります。
例えば、年間交際費が1,080万円(税込)だった場合、税込経理の場合は1,080万-800万=280万円が経費から除かれます。
一方、税抜経理の場合は、1,000万-800万=200万円が経費から除かれることになります。
以上のように、同じ金額の交際費を使っても、税抜経理のほうが、80万円だけ経費から除かれる額が小さくなるのです。
■10万円(税込)のパソコンを購入したら「税抜」「税込」でどう違う?
また、固定資産の取得に関しても税抜経理か税込経理かで変わってきます。
例えば、10万円(税込)のパソコンを購入したとします。
10万円以上の金額は資産計上することになっていますので、税込経理を採用している場合は、購入時に経費にはできず、資産としなければなりません。
対して、税抜経理の場合、パソコンの税抜価格は92,593円で10万円未満となり、購入時に経費とすることができます。
■消費税が「免税」「簡易課税」なら「税込」、「成長」「節税」したいなら「税抜」
年間の売上が1,000万円以下で、消費税の納税義務が免除されている免税事業者は、税込経理での会計処理が必須です。
また、消費税の簡易課税制度を選択した事業者は、日常経理の煩雑さなどを考慮し、税込経理を選択するケースが多いようです。
ただし、簡易課税で税抜経理を選択した場合、本則課税とは異なり、仮払消費税等・仮受消費税等勘定と納付すべき消費税額が乖離し、差額の清算が決算数値などに影響しますので注意が必要です。
一概に有利不利は言えないものの、税抜経理の採用は、前述のメリットに加えて、消費税分を排除したより適正な業績分析ができることも大きなポイントになります。
「少しでも節税したい」「ビジネスを大きく伸ばしていきたい」と考えている会社は、税抜経理を採用したほうがいいでしょう。