従業員の給料だけじゃない! 源泉徴収が必要な対象者や範囲とは?
『源泉所得税』とはどういうものなのか、その意味をご存知でしょうか。
源泉所得税とは会社側が従業員の代わりに源泉徴収し、税務署に納める所得税のことをいいます。
実はこの源泉所得税は従業員だけではなく、社外の人間が対象になる場合もあります。
今回は、源泉徴収が必要な対象者やその範囲を解説していきます。
会社が支払うべき源泉所得税とは?
所得税は個人の所得に関する税金です。
1年間の所得に応じて税率が算出され、個人事業者などは自ら税務署に納めなければいけません。
一方、法人化している会社は、雇用している従業員の所得に応じた税率の源泉所得税を徴収し、税務署に納めるところまでを行わなければいけません。
つまり、源泉所得税とは、法人の場合、会社が従業員から所得税を預かって、従業員の代わりに税務署に納める制度だと言い換えることができます。
本来であれば、従業員は自分で税務署に所得税を納税しに行かなければいけませんが、税務署と従業員の負担を軽減するためにも、会社側がすべての従業員の源泉徴収を行い、税務署に納めるという仕組みになっています。
源泉所得税の徴収から納税までの流れ
次に源泉徴収の流れを見ていきましょう。
会社を設立し、従業員を雇用すると、まず『給与支払事務所等の開設届出書』を税務署に提出します。
これは、従業員の給与やボーナス、退職金などの所得から源泉徴収を行うという証です。
そして、この届出書を出さずに勝手に源泉徴収を行うことはできません。
次に会社はすべての従業員から『扶養控除等申告書』を提出してもらいます。
所得税は所得の税額はもちろん、扶養している家族の人数によっても税率が変わってきます。
当然、扶養している家族の人数が多ければ多いほど、税率は低くなります。
また、扶養控除が適用になる従業員と適用にならない従業員とでも税額が異なってくるので、扶養控除等申告書は、会社側が従業員の扶養人数を把握するために必要なもので、変更がなくても毎年提出してもらいます。
源泉所得税は、まず従業員の残業代や各種手当てなどを計算し、そこから社会保険料を差し引いた金額をベースに、税額表と照らし合わせて求めることができます。
税額表は毎年変更されるので、その都度、チェックしておかなければいけません。
また、2037年12月31日までの所得には、所得税に加えて、東日本大震災からの復興のための『復興特別所得税』が加算されます。
復興特別所得税は、基準所得税額×2.1%で求めることができます。
こうして各従業員の源泉所得税を計算したうえで、原則として給与支払月の翌月10日までに納税をしなければいけません。
この日程は、給与の支払いが10日でも月末でも変わりません。
ちなみに、上記は給与における源泉所得税の求め方で、ボーナスや退職金はそれぞれ計算方法が異なるので注意してください。
支払い方法は、納付書を持参し、税務署や銀行・郵便局等の窓口で処理する方法と、振替口座から引き落としてもらう方法、さらにネットバンキングを使った方法などがあります。
これらの源泉所得税は、ほかの税金と同様に、毎月支払わなければならず、申告しないと延滞税が発生するなどのペナルティーが課せられるので注意しましょう。
ただ、源泉徴収の対象者が10人未満の会社であれば、届出を提出することで、源泉所得税の6カ月分をまとめて納税できる『納期の特例』を利用することができます。
外部の業者が源泉徴収の対象になる場合
また、源泉所得税は自社の従業員だけではなく、外部の業者に対して徴収して代わりに納税しなければならない場合もあります。
ある仕事を外部業者に発注した場合、その業者が法人であれば源泉所得税の徴収は不要ですが、個人であれば、源泉所得税徴収の必要が出てきます。
国税庁では、源泉徴収が必要な報酬・料金などの範囲を定めており、それによれば、個人の『原稿料』や『講演料』、弁護士や公認会計士、司法書士などへの『報酬』や『料金』、さらにプロスポーツ選手や芸能人、モデルなどに支払う『報酬』や『契約金』、広告宣伝のための『賞金』などが対象になります。
ただし、コンクールや懸賞応募作品など入選者に支払う賞金等については、1人に1回で支払う金額が5万円以下であれば、源泉徴収をしなくてもよいことになっています。
また、外部業者に支払う金額から源泉徴収を行う場合には、いくつかの注意点があります。
『謝礼』や『研究費』、『車代』などの名目であっても実態が『報酬』や『料金』であれば、源泉徴収の対象になりますし、金品ではなく物品で支払ったとしても、『報酬』や『料金』とみなされます。
さらに、報酬や料金として支払った金額の全部、原則として、消費税を含んだ額が源泉徴収の対象になります。
ただし、弁護士や税理士などからの請求書等に報酬・料金等の金額と消費税等の金額とが明確に区分されている場合には、消費税等の額を除いた報酬・料金等の金額のみを源泉徴収の対象としても差し支えありません。
源泉徴収の範囲は従業員だけでなく、場合によっては外部の業者にも及びます。
源泉徴収の対象となる範囲を理解し、正しく徴収したうえで、納税を行うようにしましょう。
※本記事の記載内容は、2019年7月現在の法令・情報等に基づいています。