労働法に基づいた『出勤簿』の記入方法と管理方法とは
出勤簿は、従業員の労働時間を記録するための書類で、従業員の残業時間や深夜労働の時間を把握するために、なくてはならないものです。
また、労働基準法では、出勤簿の保存を義務付けており、正しく管理・保管をしておかない場合、労働法違反になってしまいます。
今回は、従業員の労働スケジュールを把握し、適切な労務管理を行ううえで大切な出勤簿の記入方法や管理方法などを説明していきます。
タイムカードと実際の労働時間の差を修正する
出勤簿は、賃金台帳や労働者名簿と並ぶ『法定三帳簿』の一つで、労働法によって適切な管理が義務付けられています。
会社が従業員の労働時間を正確に把握し、適切な給与を支払うためのものであり、基本的には、正社員やパート・アルバイトの区別なく、全従業員の労働時間を記入しなければいけません。
管理職に関しては、経営者と同じく自身の裁量で出退勤が可能なことが多いため、必ずしも出勤簿に記入する必要はありませんでしたが、働き方改革推進により2019年4月に改正施行された労働安全衛生法では、管理職やみなし労働制の対象者についても健康管理の観点から労働時間の管理が義務付けられました。
そのため、原則としてすべての労働者には、労働時間管理の適正な把握のための出勤簿が必要となります。
タイムカードなどで従業員の始業時刻と終業時刻の記録を行う企業もありますが、タイムカードだけでは出勤簿の代わりにはなりません。
なぜなら、タイムカードに打刻される出退勤の時間は、実際の労働時間とは一致しないことがあるからです。
タイムカードを押してから、すぐに労働に取りかかるのであれば問題ありませんが、たとえば、仕事を始める前にコーヒーを飲んだり、雑談したりする時間もあるでしょう。
そういった時間を労働時間に含めてしまうことになります。
一般的に、タイムカードと実際の労働時間にはラグが発生するものです。
タイムカードを出勤簿として扱うには、作業日報や残業申請書などの資料と照らし合わせて、実際の労働時間との差異がないことを証明しなければいけません。
従業員に作業日報をつけさせたり、残業申請書を提出させたりしたものを、使用者が従業員の労働時間を算出するために有している記録と突き合わせることにより確認し、記録します。
そうして、実際の正しい労働時間を記入したものが、出勤簿として認められることになります。
労働時間の記録方法は2種類
出勤簿には、正確な労働時間を把握する目的のほかに、従業員の健康を守るという側面もあります。
従業員が働きすぎているのであれば、これを是正していかなければなりません。
厚生労働省による『労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置に関するガイドライン』のなかでは、労働時間(始業・終業・休憩時間など)を原則的な記録法として、以下の2種類のうちのいずれかと定められています。
(1)使用者による直接確認および記録
(2)タイムレコーダーなどの客観的な記録
(2)には、タイムカード、ICカード、IDカード、パソコンの使用時間の記録が含まれます。
もし、その2つの方法ではなく自己申告制で行わざるを得ない場合には、
●その対象となる労働者に対して、労働時間の実態を正しく記録し、適正に自己申告を行うことなどについて十分な説明を行うこと
●自己申告により把握した労働時間が実際の労働時間と合致しているか否かについて、必要に応じて実態調査を実施し、所要の労働時間の補正をすること
●労働者の労働時間の適正な申告を阻害する目的で時間外労働時間数の上限を設定しないこと
といった措置を講じるよう決められています。
さて、そういったいくつかの決まりがある出勤簿ですが、書式に関しては決まりがありません。
手書きでも電子媒体への記録でも、どちらでも問題はありません。
記入するのは、従業員の出勤日と労働日数、始業と終業の時刻、日別の労働時間、時間外労働や休日労働の日付と時間、深夜労働の日付と時間などです。
出勤簿には、これらの客観的な時刻を記録するようにしましょう。
厚生労働省では、ICカードやスマートフォン、PCやタブレットを使用した出退勤の打刻を推奨しています。
エクセルなどで管理するのが簡単ですが、最近はWeb上でフォーマットが公開されていたりもするので、それらを活用してもよいでしょう。
また、出勤簿は、労働基準法第109条によって、3年間の保存が義務付けられています。
出勤簿は労働基準監督署の調査に必要な書類なので、解雇や退職した従業員の記録であっても、最低3年間は残しておくようにしましょう。
万が一、出勤簿を紛失したり、破棄してしまったりした場合には、30万円以下の罰金が科される可能性があるので十分に注意してください。
出勤簿は、会社を経営していくうえで、欠かせない書類の一つです。
紛失してしまわないよう保管するのはもちろん、外部の人に見られないようにセキュリティ対策を講じておくことも重要です。
※本記事の記載内容は、2021年1月現在の法令・情報等に基づいています。