税務署へ行かずに税務手続きが可能に!『税務行政DX』の概要
2021年6月、国税庁が『デジタルを活用した、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し』に取り組んでいくことを公表しました。
いわゆる『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション(税務行政DX)』と呼ばれるこの取り組みは、税務署に行くことなく、あらゆる税務手続きをオンラインで行える社会の実現を目指すものです。
今回は、経理担当者であれば知っておきたい税務行政DXについて説明します。
税務行政DXで実現する『利便性の向上』
デジタル技術の活用によってサービスや仕事に革新をもたらす、デジタル・トランスフォーメーション(DX)を推進する動きが社会全体に広まっています。
この流れを受けて、国税庁では『納税者の利便性の向上』と『課税・徴収の効率化・高度化』を2本柱とした税務行政DXを推し進めていくことを発表しました。
国税庁は、2017年に公表した『税務行政の将来像』を改定し、税務行政DXを踏まえた『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション -税務行政の将来像2.0-』を2021年6月に公表。
そのなかで、あらゆる税務手続きが税務署に行かずにできる社会を目指すと明言しています。
税務行政の将来像2.0では、納税者の利便性の向上のための構想として『申告・申請等の簡便化』が掲げられています。
これまで、基本的に確定申告は税務署に直接出向むいたり、e-Taxを利用する場合も事前に申告・申請データを作成したりという煩雑な作業が伴いました。
この簡便化では、確定申告に必要なデータ(給与や年金の収入金額、医療費の支払額など)を申告データに自動で取り込むことにより、数回のクリック・タップで申告が完了する仕組みの実現を目指しています。
還付金振込口座の入力も不要になるため、利用者の負担が減ることが期待されます。
また、申請・届出に関しても、これまでは個々の手続きごとに様式が決められており、オンラインでも書面様式を前提としたフォーマットへの入力が必要でした。
これを改善し、一度提出した情報を二度提出させない『ワンスオンリー』の観点から、将来的には提出物を減らし、必要なものについても入力事項を最小限にする仕組みづくりを目標としています。
具体的には、政府が運営するオンラインサービス『マイナポータル』やe-Taxのアカウントと連携し、過去に提出した申請・届出の状況や納税の状況などに関する情報を蓄積します。
たとえば、各種特例の届出をする場合には、そのなかから必要な項目にチェックを入れて『届け出る』を選択するだけで、手続きができるようになります。
そして、特例適用状況および納税証明書の確認も、マイナポータルやe-Taxのアカウント画面で行えるようになります。
2022年にはスマホ決済サービスも導入予定
税務相談についても、国税庁ホームページに掲載しているよくある税の質問に回答する『タックスアンサー』の充実やチャットボットの改良などで使い勝手の向上に取り組んでいます。
国税庁のチャットボット『ふたば』は、税務署に来署せずともオンラインでAIが税務に関する疑問に答えてくれるサービスとして、2020年10月にスタートしました。
しかし、運用が始まったばかりということもあり、年末調整に関する疑問や所得税の確定申告に関する疑問など、対応項目が限定的でした。
今後は、対応項目を順次拡大していき、さまざまな税務相談への対応を可能にするとしています。
また、一般的な税の質問に答えるタックスアンサーについても、これまでは大きな分類項目から小さな分類項目へと順次選択していく構造になっており、知りたい情報にたどり着きにくい点が課題でした。
2022年4月には、より使い勝手を向上させた改善版がリリースされる予定であると発表されました。
ほかにも、国税庁ではキャッシュレス納付を今後も推進していくとしています。
すでに現時点でも、税金の納付に関しては税務署や金融機関の窓口、口座振替で納付するほか、インターネットバンキングによるオンライン納付、コンビニ納付、ダイレクト納付(e-Taxを利用したオンライン納付)、専用サイトを利用したクレジットカードによる納付など、さまざまな方法があります。
さらに、2022年からはスマートフォンを使用した決済サービスによる納付も導入される予定です。
納付手段の多様化によって利用者の利便性の向上を図り、同時に現金管理に伴う社会的なコスト削減のため、キャッシュレス納付も推し進めていくというわけです。
税務行政DXによってさまざまな税務手続きが、将来的に簡単・便利になっていきます。
企業の経理担当者は自社の税務処理にも関係の深い、税務行政の未来像について知っておきましょう。
※本記事の記載内容は、2021年9月現在の法令・情報等に基づいています。