障害者の『法定雇用率』で企業が注意すべきポイントは?
企業に一定の割合で障害者雇用を義務づける『障害者雇用促進法』が改正され、雇用人数の割合を定めた『法定雇用率』の2.3%が、2024年4月から2.5%に引き上げられます。
法定雇用率の引き上げに伴い新たな雇用を行うにあたり、障害者の雇用経験やノウハウがなく、また、手続きや対応などの面から不安を抱えているという企業も少なくないでしょう。
そこで今回は、障害者の雇用を行う企業の負担を軽減するための助成措置や、サポートを受けられる支援機関および支援制度などを紹介します。
障害者雇用で受けられるさまざまな助成措置
法定雇用率の引き上げにより、従業員を40人以上雇用している企業には、2024年4月から障害者を1人以上雇用する義務が生じます。
対象となる企業は、毎年6月1日時点における障害者雇用状況を『障害者雇用状況報告書』にまとめて、管轄のハローワークに報告しなければいけません。
この報告のことを通称『ロクイチ報告』と呼びます。
障害者の雇用人数が0人であってもロクイチ報告を行わなければならず、報告をしない、または虚偽の報告をした場合には30万円以下の罰金が科せられる可能性があります。
法定雇用率を満たしていない企業に対して、管轄のハローワークは『障害者雇入れ計画』の提出を命じることがあります。
そして、命令が出た後の一定期間、計画に沿った障害者雇用の実施状況をチェックします。
計画を提出してなお基準の法定雇用率が未達成のままの企業には、適正実施勧告や特別指導、企業名の公表などの措置が取られます。
さらに、常用雇用労働者が100人超の未達成企業からは『障害者雇用納付金』が徴収されます。
これは『障害者雇用納付金制度』に基づくもので、常用雇用労働者100人超で法定雇用率を下回る企業は、不足する障害者数1人当たり月額5万円を納付する必要があります。
一方、常用雇用労働者100人超の企業で法定雇用率を超えて障害者を雇用している場合は、超過1人当たり月額2万9,000円の『障害者雇用調整金』が支給されます。
なお、常時雇用労働者数が100人以下の企業で、各月の雇用障害者数の年度間合計数が一定数を超えて障害者を雇用している場合は、その一定数を超えて雇用している障害者1人当たり月額2万1,000円の報奨金が支給されます。
また、自宅などで働く在宅就業障害者に仕事を発注する企業に対して、特例調整金または特例報奨金を支給する『在宅就業障害者に対する支援』もあります。
該当するようであれば、条件などを確認しておきましょう。
ほかにも、短期間であれば働ける障害者の就労機会の確保を目的に、週所定労働時間が10時間以上20時間未満の障害者を、1年を超えて(見込みを含め)雇用する企業に対して一定額を支給する『特例給付金制度』がありましたが、2024年4月1日より、週所定労働時間10時間以上20時間未満の重度身体障害者、重度知的障害者および精神障害者について、雇用率上、1人を0.5人としてカウントできるようになりました。
そのため、この特例給付金は廃止されることになります。
ただし、この特例給付金制度について、2024年3月31日までに雇い入れられた週所定労働時間が10時間以上20時間未満の重度以外の身体障害者および知的障害者については1年間の経過措置があります。
ハローワークで受けられる雇用サポート
各都道府県の労働局とハローワーク、障害者就業・生活支援センターなどの支援施設では、障害者雇用促進のためのさまざまな取り組みを行なっています。
特に、障害者を雇用するイメージが湧かない企業に対しては、セミナーや見学会、障害者の職場実習の受け入れ推進をはじめ、障害者を試行的・段階的に雇い入れることができるトライアル雇用のサポートといった支援を実施しています。
また、ハローワークでは、求職活動をしている障害者と企業をマッチングさせる障害者就職面接会も定期的に開催しています。
地域のハローワークには相談窓口が設けられており、エリアによっては専門の職員や相談員が配置されています。
障害者雇用への疑問や不安がある事業者は、一度相談してみることをおすすめします。
さらに、障害者雇用に関しては、政策金融公庫による低利貸付制度や、助成金の非課税措置や事業所税の軽減措置といった税制優遇制度などの助成措置も講じられています。
『特定求職者雇用開発助成金』などの各種助成金は、ハローワークの紹介により、一定期間「継続して雇用する労働者」として障害者を雇用した場合などに助成が認められます。
企業が雇用している障害者の数は、2023年に約64万人を記録し、20年連続で過去最多を更新しました。
しかし、調査した企業のうち障害者の法定雇用率を達成している企業は、全体の約半分に留まっています。
障害者の雇用は法的な義務ですが、その一方で、人材不足の解消や多様性を受容する職場風土の構築、社会的責任を果たすことによる企業イメージの向上といったメリットもあります。
ハローワークなどの支援機関に相談しながら、自社に合った障害者の雇用計画を進めてみてはいかがでしょうか。
※本記事の記載内容は、2024年3月現在の法令・情報等に基づいています。