顧客体験からエンゲージメントを高める カスタマーエクスペリエンスとは
世の中はモノや情報にあふれ、私たちの頭の中で処理しきれない情報過負荷の状態に陥っています。
今回は近年注目されている「エクスペリエンス(体験・経験)を売る」という手法である『カスタマーエクスペリエンス』の考え方について説明します。
カスタマーエクスペリエンスはどうして支持されているのか
カスタマーエクスペリエンス(以下、CX)は、マーケティングや経営戦略のコンセプトのことで、日本語では『顧客体験』『顧客体験価値』と訳されます。似た言葉で、顧客を支援・サポートする『カスタマーサービス』がありますが、CXはこれを内包しています。そして、チャネル(集客のための媒体や流通経路)や店内体験、販売プロセスにまでおよび、非常に広い概念としてとらえられる点で、カスタマーサービスと異なります。
この『顧客体験(価値)』が重要視されてきている背景の一つに、前述の『情報の過負荷』があげられます。世の中にはあふれんばかりの情報が飛び交っており、「うちのサービスは他社とは違う」「差別化された商品」といっても、消費者にはその違いを理解することがむずかしいでしょう。生活スタイルや価値観が多様化し、従来のようにその商品・サービスの魅力を知るだけでは、商品やサービスの購入にはなかなか結びつきにくいといえます。
また、スマートフォンの普及により、SNSなどを駆使した顧客とのコミュニケーション手法も多様化しています。実店舗、オンラインの違いにかかわらず、顧客が商品やサービスの購入・利用にあたってどのような体験をし、その体験に対してどのような価値を感じているかに着目し、洗い出されたデータをもとに顧客一人ひとりの体験をさらに向上させる必要があります。こうしてファンを増やすことが、CXの基本的な考え方です。CXは、現代の消費活動にマッチする部分が多いため、企業のマーケティング活動において非常に重要な考え方であるといっても過言ではありません。
リピーターが増えて認知度も拡大CXの導入にはメリットが多い
CXの実例としては、スターバックスコーヒーやApple社が有名です。スターバックスコーヒーは、ソファや落ち着いた照明などを使ったインテリアに揃えて、おいしいコーヒーを楽しむ環境を整えています。まさにユーザー体験を具現化しているといってよいでしょう。またApple社も、iPhoneなどで多彩なアプリを展開して人々の生活を豊かにするコンテンツを提供したり、カスタマーサポートなどの周辺サービスでユーザーをサポートしたりしています。このような取り組みにより、他社サービスと圧倒的な差別化が図られているのです。
CXのメリットは「ファンの創出」「ブランディング力の向上」「リピーター客の獲得」など、多岐に渡ります。人の好みや価値観にアプローチする手法だけあり、顧客から得る評価は必ずしも好意的なものになるとは限らないというデメリットもあります。しかし、CXの向上に取り組むことは、自社製品やサービスに新たな価値を創造する可能性を高めるうえで重要なのです。自身の会社でもCXについて真剣に考え、他社と一線を画す顧客体験を作り出してみてはいかがでしょうか。