政府が呼びかける「5%賃上げ」 中小企業が実現するための具体策と事例
Question:政府が5%超の賃上げ定着を企業に求めたとの報道がありましたが、限られた原資のなかで従業員に安心して長く働いてもらうために、どのように賃上げを実現していけばよいでしょうか。中小企業でも無理のない範囲でできる具体的な方法や工夫を、他社の事例なども踏まえて教えてほしいです。
Answer:賃上げ原資確保のため、業務効率化や助成金活用など多くの企業が工夫を凝らしています。なかには金銭面だけでなく、福利厚生の充実で実質的な賃上げを行う例もあります。確かに賃上げは簡単にできることではありませんが、まずは自社の現状を見つめ直し、できるところから始めてみてはいかがですか。
賃上げ5%の定着を企業に要請 賃上げを阻む構造上の根深い課題
政府は政労使会議を開き、経済界に対し「5%を超える賃上げ」の定着を要請しました。その背景には、長引く物価高騰と、少子高齢化による構造的な人手不足などがあります。実質賃金が伸び悩むなか、従業員の生活を守り、優秀な人材の流出を防ぐためには、賃上げはもはや避けて通れない喫緊の経営課題となっているといっても過言ではないでしょう。
しかし一方で、多くの中小企業にとって限られた原資のなかでの賃上げは、決して容易ではありません。「ない袖は振れない」のが現実であり、理解はできてもなかなか着手できないというのが実情ではないでしょうか。
日本の賃金が上がりにくい背景には、非常に根深い構造上の問題があります。たとえば、①主要国で低い水準にある労働生産性、②賃金格差のある非正規雇用の多さ、③転職による賃金上昇が起きにくい人材流動性の低さ、④一度上げると下げにくい賃金の下方硬直性、などがあげられます。
この根深い問題は、一企業の力だけで簡単に解決できるものではありません。しかし、だからといって手をこまねいてもいられません。企業は今後賃上げに向け、どのような取り組みをしていく必要があるのでしょうか。
人手不足と物価高を克服する投資 第3の賃上げ活用で賃上げ実現へ
企業には、賃上げを単なる「コスト増」ととらえるのではなく、人材定着と生産性向上をもたらす「未来への投資」ととらえ直す意識改革が求められています。
前述した構造上の諸問題を打破するには、賃上げに必要な原資を確保することが何より必要になります。正攻法として「生産性向上」「助成金」などが思い浮かぶかもしれません。実際に賃上げを実現した事例をいくつかご紹介しましょう。
大阪の就労継続支援A型事業所では、助成金の活用と役員報酬の削減で賃上げ原資を捻出し、意欲向上と売上還元につなげ、さらに対話を重視して離職を防止しました。また、佐賀のスポーツ店では、助成金でDTFプリンターを導入し生産性向上を実現、新たな販路獲得により、そこで得た利益を従業員へ還元することに成功しています。
それでも現金給与の増額がむずかしい場合は、福利厚生を活用した「第3の賃上げ」が有効です。食事補助などで非課税枠を使い、企業の実質負担を抑えつつ従業員の手取りを増やす手法です。
賃上げはコストではなく成長への投資です。自社の状況に合わせ、正攻法と第3の賃上げを組み合わせ、できる一歩から踏み出すことが未来を切りひらくカギとなります。





