スキンシップで部下に安心感を
欧米人に比べると、日本人はスキンシップが苦手だ。
挨拶代わりのキスやハグの習慣はもちろん、握手でさえも馴染みが薄い。
組織が円滑に機能していれば、言葉だけのコミュニケーションでも意思疎通は図れるだろう。
しかし、トラブルに直面したり、仕事が停滞したりしている局面ではそうもいかない。
時間のなさやノルマの量が組織全体に圧迫感を招き、コミュニケーションが少なくなりがちだ。
上司が部下にかける言葉が、キツくなったりもする。
上司に厳しい言葉を投げかけられたら、部下はどのような気持ちを抱くだろうか。
仕事への取り組み方を見直す以前に、「上司に嫌われているのでは」という疑念が生じるかもしれない。
契約社員であれば、「今季限りで契約を打ち切られてしまうかも」といった不安を覚えることもあるだろう。
「上司の顔色をうかがう」ような空気が生まれてしまうのだ。
プロ野球の監督として成功を収めた星野仙一氏は、選手の奥さんの誕生日に花を贈っていた。
練習や試合で自分を叱責する監督が、妻の誕生日を祝ってくれたら──。
選手は胸を温かくするはずだ。
「自分は監督に嫌われているかもしれない」とは考えない。
厳しい言葉も、「自分を成長させるためのアドバイス」と受け止められる。
奥さんに花束を贈るという心遣いは、言ってみれば心のスキンシップだ。
選手を本能的に安心させる効果がある。
直接的なスキンシップも効果は高い。
サッカーの世界的名将として知られるジョゼ・モウリーニョは、練習の合間に選手と触れ合う。
選手の肩を叩いたり、おんぶをさせたり、自らも選手をおんぶしたりする。
調子を落としている選手、ミスをしてしまった選手、試合に出ていない選手とは、ひんぱんにスキンシップを図る。
「キミの実力は評価しているぞ」という彼なりのメッセージだ。
選手に安心感を与えているのである。
師走は忘年会やパーティーなどが多い季節だ。
アルコールの力も少し借りて、部下とスキンシップを図ってみてはいかがだろう。
「頑張れよ」というひと言に、肩をポンと叩く行為を添えるところから、まずは始めてみたい。