事業所のカスハラ対応が義務化へ従業員を守るために備えるべきこと
近年、顧客や取引先からの過度なクレームや暴言などが「カスタマーハラスメント(カスハラ)」として社会問題化し、早ければ2026年10月からはカスハラ対策が法的に義務づけられる予定です。今回は、法改正の概要や企業が整備すべき体制や運用ポイントを解説します。
カスタマーハラスメントとは何か法改正で求められる対応内容
カスタマーハラスメント(以下、カスハラ)とは、顧客や取引先による暴言、威圧的態度、不当な要求などの著しい迷惑行為であって、従業員の尊厳や安全を侵害し、就業環境を悪化させる行為のことをいいます。カスハラは企業に対して次のような深刻な影響を及ぼすことがあるため、カスハラ対策はパワハラやセクハラと同様に、次のような労務管理上の重要な課題となっています。・従業員の精神的な負担が大きく、メンタルヘルス不調や離職率の上昇につながる・顧客対応に追われることで業務効率が低下する・企業イメージや顧客満足度の低下、コンプライアンス上のリスクを招く可能性もあるカスハラの社会問題化に伴って、厚生労働省は2022年に「カスハラ対策企業マニュアル」を公表し、企業に体制の整備を促してきましたが、2025年6月に改正労働施策総合推進法が成立し、早ければ2026年10月からは企業に対して「カスハラ対応措置」が法的に義務化される予定です。これにより、カスハラから従業員を守るための仕組みづくりは、すべての企業にとって避けられない課題となっています。今後、厚生労働大臣が定める指針によって企業が講ずべき措置の内容が明確になりますが、①事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発、②相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備、③カスハラに係る事後の迅速かつ適切な対応、などが規定されると想定されています。これに伴い、企業には、相談窓口の設置や対応体制の整備など従業員を守る職場環境づくりと同時に、顧客対応ルールの明確化が求められます。
義務化に向けてできる準備企業が取り組むべき実務ポイント
カスハラ対策の義務化に向けて企業が取り組むべき施策の第一歩は、経営層がカスハラに対する明確な方針を打ち出し、現場が一貫した対応を取れるよう周知すると共に、相談窓口や社内通報制度を設けて、従業員が安心して声を上げられる環境をつくることです。これによって、カスハラには毅然とした対応をし、従業員の人権を尊重するという自社の基本姿勢を示すことができます。そして、実務上は、次のような具体的な対策をとることによって、カスハラ発生時に適切に対応できるようにすることが必要です。①対応マニュアルの整備厚生労働省が公開しているマニュアルを参考に、自社の業種や業態などに合わせてカスタマイズし、クレーム対応の基準を統一する。②従業員への研修の実施研修のプログラムに実際のカスハラ場面を想定したケーススタディを取り入れ、現場の判断力と対応スキルを高める。③外部機関との連携刑法などの法律に抵触する可能性がある場合や訴訟などの法的対応をとる場合には、警察や弁護士などに連絡、相談できる体制を構築しておく。カスハラ対策は、従業員を守るための法的義務であると同時に、働きやすい職場環境を築くための重要な経営課題です。制度施行を待たず、早期に準備を進めることが、従業員の安全と企業の信頼性向上にもつながります。対応体制やマニュアル整備に不安がある場合は、専門家に相談し、早期に実効性のある仕組みを構築することをおすすめします。




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