マーケティングは単なる“売りさばき方”ではない
「日本企業は“モノ(製品)”は良いのに、
マーケティングが下手だから業績が伸びない」
この頃そんな話を、よく耳にします。
こういう言い方での“マーケティング”は、
“単なる売り方”に過ぎません。
「まず質の良いモノ」があって、
それを上手に売りさばくのが
マーケティングだ、というわけです。
しかし、そう考えている限り、
つまりマーケティングを単なる“売りさばき方”と
イメージしている限り、
日本企業の復活は、ほど遠いのではないか。
私はそう危惧しています。
アメリカのレビットという学者が言った有名な言葉があります。
それは「電動ドリルが1万台売れたとして、
それは電動ドリルを欲しいというニーズが 1万あったのではなく、
“穴を開けたい”というニーズが1万あったのだ」というものです。
つまり穴が上手く開けられれば、必ずしも電動ドリルである必要はなく、
壁に穴が開く薬品でも良い、というわけです。
同じくレビットが取り上げたものに、アメリカの鉄道産業衰退の話があります。
かってアメリカでは、大陸横断鉄道が隆盛していました。
鉄道会社は、10分早く着くとか座席の座り心地が良くなったとか、
鉄道会社同士の競争に明け暮れていました。
しかし、消費者が欲しかったのは、
例えばニューヨークからロサンゼルスまでの「速く快適な移動」だったのです。
こうして、鉄道会社は顧客を航空産業に奪われます。
これが、「マーケティング・マイオベア (マーケティング的近視眼)」と 呼ばれる現象です。
我々は、“モノがいい”とか “サービスの質がいい”ということについて、
もう一度、頭を切り替えて考え直さなければなりません。
その時、マーケティングの考え方は、とても役に立ちます。
マーケティングは、単なる技というよりは、哲学・フィロソフィー・考え方・物事の捉え方、です。
そんな視点から、もう一度マーケティングについて、考えてみては?