税務調査で指摘されない摘要欄の書き方を知っておこう
帳簿には取引における勘定科目や金額を記載しますが、それだけでは取引内容が把握できないため、『摘要欄』に取引先や取引の詳細など、具体的な情報を記入する必要があります。
もし、この欄が空白だったり、記入された内容があいまいだったりすると、税務調査で追加の資料を求められたり、調査の期間が長引いたりしてしまいます。
今回は、税務調査で指摘されない摘要欄の書き方について説明します。
摘要欄に記入がないとどうなる?
帳簿とは、事業の取引状況、つまりは収入金額や必要経費の発生など、お金の流れを記録した台帳のことで、事業活動に欠かせないものです。
しかし、記載されている項目が日付や金額だけでは、後で帳簿を見返した際に、どのような取引だったのかが伝わりません。
また、帳簿を入力する人物が複数いる場合、摘要欄に取引内容の詳細が記載されていないと、ほかの人が見たときに、「これは何のことだろう」と疑問に思うかもしれません。
入力した人物はその取引について覚えていても、ほかの人がその取引内容を把握するには、より詳細に書かれた情報が必要です。
その点からいっても、摘要欄はなくてはならないものなのです。
摘要欄は、日付や金額、勘定科目以外の詳細情報を記入します。
取引先の名称や取引事由など、取引の事実を示す具体的な内容を記入していきましょう。
また、普段の税務申告で摘要欄がチェックされることはありませんが、税務調査においては、摘要欄への記入の有無が大きな意味を持ちます。
摘要欄が空欄だったり、取引内容が具体的に記入されていなかったりすると、税務官に不明瞭な取引だと判断されかねません。
その取引が経費に関するものであれば、経費の計上が認められなくなってしまう可能性もあります。
取引があったという事実や取引の根拠を示すためにも、摘要欄は正確に記入しておきましょう。
現在、多くの企業では、帳簿の入力に会計ソフトを活用しています。
会計ソフトにも摘要欄があり、そこに入力したキーワードでソートや検索をすることもできるため、社内で記入するルールを統一しておくとよいでしょう。
ルールを統一していないと、作業効率が低下するばかりか、肝心の税務調査において、記入した人しかその内容を説明できず、調査を長引かせてしまうことになります。
では、摘要欄に情報を記載するときのルールは、どのように決めていけばよいのでしょうか。
摘要欄には、取引先の名称や取引内容などを記載します。
取引先に関しては、売上であれば販売先、経費であれば販売元を記入し、取引内容に関しては、売上であれば販売した商品名、経費であれば購入した商品名を記入しましょう。
たとえば、移動に使用したタクシー代を経費として計上する場合は、以下のように記載します。
タクシー代であることはもちろん、利用したタクシー会社やその区間、移動の目的なども記入します。
<借方>
旅費交通費
1,380円
<貸方>
現金 1,380円
<摘要>
○○交通株式会社
タクシー代 渋谷区笹塚~新宿区住吉
(□□工務店訪問)
この際、前述した通り、社内で表記ルールを決めておくことが重要です。
『○○交通株式会社』なのか、株式会社は省略して『○○交通』だけにするのか、番地や号まで含めるのか、それも県をまたぐ移動に限って簡略化させるのかなど、あらかじめ細かく決めておくことで、ソートや検索も容易になり、誰が見ても取引内容を理解できる帳簿を作ることができます。
接待交際費であれば、お店の名前のほかにも、参加人数や名称、食事の目的などを記入しておきます。
ただし、細かくなると入力に手間がかかるので、「○○社・○○さんほか3名」のように、ルールを定めて省略しても問題ありません。
また、摘要欄には軽減税率についての記載も必要です。
2019年10月からスタートした軽減税率は、消費税10%の引き上げにともない、特定の品目の税率をほかの品目に比べて低く定めるというもので、現在、食料品などの一部品目の消費税が8%に据え置かれています。
摘要欄に記載する取引に関しても、標準税率の10%なのか、軽減税率の8%なのかを区別する必要があります。
国税庁では、軽減税率の商品を摘要欄に記載する場合、『※』や『☆』などの記号を記載して、軽減税率の商品を明確にするよう求めています。
また、帳簿に『※は軽減税率対象』と表記するなど、記号が軽減税率の対象であることを明確にしておきましょう。
帳簿は税務調査の際に必要になるだけでなく、自社の過去の取引における大切なデータです。
きちんと整理された帳簿のつけ方を心がけることが大切です。
※本記事の記載内容は、2021年12月現在の法令・情報等に基づいています。